第43章 GREEN 〔石切丸/R18〕
私の言葉を聞いた石切丸さんは、驚いたように目を見開いた後、すぐ表情を戻し、穏やかないつもの様子で「あぁ、そうだね」とだけ言った。
やっぱり石切丸さんには想うひとがいるんだ、と思い知る。
どこで知り合ったひとなんだろう、もしかしたら以前の審神者様なのかもしれないな。
そう思って何故か私の心は水を掛けられたように冷え冷えとした感覚に陥る。
石切丸さんに抱かれていたからだが解かれ、ようやく自由になった。
もっと胸の中にいたかったな、なんて思っていたけれど、きっと石切丸さんは自分の想うひとの事を思い出して、審神者である私にいつまでも戯れを仕掛けてはいけない、と思ったのだろう…そう、私は理解した。
からだが離れて私は石切丸さんから少し離れて座り、飲み終えた湯呑を盆に乗せた。
「…祈祷、おつかれさまでした。いつもありがとうございます」
「…あぁ…うん…」
石切丸さんはこちらを見上げたようだったけれど、すぐ庭先へ視線を戻したよう。
何も無かったように私は振る舞い、盆を持って立ち上がる。
「私は仕事に戻ります。お先に失礼します」
部屋へ戻り盆をその辺に置くと、座り直して大きくため息をついた。
見慣れた緑色の衣装。
見付けるだけで心が弾んで嬉しくなった。
でも今は、これからは、見るのもつらくなるのだろう。
だって、心は私では無く、どこか別なひとのところにあると知ってしまったから…