第43章 GREEN 〔石切丸/R18〕
「何用かな、主?」
石切丸さんに声を掛けられ、わざわざ祈りの手を止めて来てもらったのに、顔を出さない訳にはいかず、私は三日月さんを睨んで仕方なく開いた障子のところまで近寄った。
「あの…特に用って事は…ええと、祈祷が終わったらお茶でもどうかなって」
誤魔化すにはお茶に誘うしかない、と思って声を掛けると、石切丸さんは眩しい笑顔を見せる。
「あぁ、ありがたくちょうだいしよう、主」
縁側に座った石切丸に、三日月さんが声を掛ける。
「もう祈祷は終わったのか?」
石切丸さんは縁側に腰掛けると答える。
「ちょうど呼ばれた時に終わったところだったよ」
「ほう」
そして三日月さんはこちらに今度は声を掛けてきた。
「主、俺はちょっと鶴丸に用があるのでな、後は石切丸に頼む」
「は?え?三日月さん?」
私がお茶を淹れていた手を止めて顔を上げると、三日月さんは何を考えているのかわからない笑みを浮かべ、ひらひらと片手を振ると部屋から出て行ってしまった。
「…三日月に用が有るなら呼び戻そうか?」
少しの間を置いて、石切丸さんから問われるが、正直三日月さんにはお願いする事は今は無い。
首を左右に振ってから気持ちを切り替えるように「お茶、すぐ淹れますね」と言い、熱いお茶を茶碗に注いで座っている石切丸さんへお茶を運んだ。