第43章 GREEN 〔石切丸/R18〕
目に見える緑色、それはあの刀剣男士の色。
陽射しの中で映え、ひるがえる衣装を、つい目で追い掛けてしまう。
今日も仕事の手を止めて、あの色を見付けて追い掛けていると、横から今日の近侍の三日月宗近さんに笑われた。
「主は本当にあの者が好きだのう」
好き、と言われて慌てて言い返す。
「いや、好き、とかじゃなくてっ。あの衣装の色が目立つなって見ていたのっ」
「ははは、隠さぬでも良いぞ」
三日月さんの全てお見通しといわんばかりの表情に、何も言い返せず大きく肩で息を吐いた。
「もう…そう、思いたかったら、それでいいよ…」
否定も肯定もせずにおくと、三日月さんはおやおやといった体でこちらを覗き込む。
「ほう、我が主はへそを曲げたか。どれ、では、じじいが骨を折ってやるか」
じじいと言う割りにすらりと細身のからだを立ち上がらせると、三日月さんはおもむろに障子を全開にし外へ声を張り上げた。
「石切丸、主が呼んでいるぞ」
「は?え?呼んでないよ!」
慌てて声をあげるけれど、三日月さんはおもしろそうな表情を浮かべたまま、呼ばれた石切丸さんが来るのを手招いていた。
そしてやって来た石切丸さんは祈りを捧げていたようで、少し汗を浮かべていた。