第41章 愛はこれから 〔大倶利伽羅/R18〕
「前に同じ事を俺にしただろう?お返しだ」
「…あぁ、あぁ…」
瞬時に思い出す、近侍になったばかりの頃の小さないたずら。
あれをやり返されたのか、と一気に恥ずかしくなって顔を赤くなるのを感じる。
「…お、大倶利伽羅さん…そういう事、やるとは思わなかった…」
とにかく何か言わないと、と負け惜しみのように言ってみる。
「そうか?おまえが俺にやってきたからお返しをしただけだ」
得意げな様子で返されると何も言えなくなる。
おかしい、自分がおかしい、と思って、ハタと気付く。
これこそ、まさに、恋をする、という状況ではないか、と。
さんざんオトコと遊んできた私がたった一振りの男士を…心から欲しがる…とは…
自分の感情に気付いた途端、その場から動けなくなって内心あたふたしてしまう。
私が動かずにいるので、大倶利伽羅さんが立ち上がり、私の近くへ来てくれる。
いや、待って、来ないで、来なくて良いから、と内心叫ぶものの、「どうした」と声を掛け私の顔を覗き込む。
「…は…あ…え…う…」
声も出せずにぱくぱくと口を開くだけの私に、大倶利伽羅さんは額で手を当ててくる。
「熱は…ないぞ…どうした」
どうしたもこうしたも、貴方のせいなんですけど。