第8章 交差しない、けれど愛する 〔一期一振/R18〕
「怪我なくて良かったって事が変な事なの?」
むしろおろおろし出した雅に、一期は笑いながら言う。
「怪我をしたら雅が治してくれるのでしょう?それなのに怪我をしなくて良かった、とこの場面で言われてしまっては、今は何もしないと言われているのと同じですよ」
「え…え…そんなつもり…なかったんだけど…ええと…ごめんなさい…」
どうしようとうろたえる雅は一期に謝る。
「続きをしても良いという事でしょうか」
笑いながら一期が問うと、質問の意味を理解して雅は真っ赤になる。
「そ…それ…いじわる…っ」
雅がぷいと横を向くと、一期は笑うのをやめて自分の腕の中に雅を引っ張り閉じ込めて囁く。
「もっと意地悪…しましょうか?」
「一期…ずるい…っ」
「私を翻弄したのは貴女ですよ、雅」
一期と雅の頬がくっつき、互いの呼吸だけが耳に入る。
雅は自分の両腕を一期のからだに回し自分から抱き着く。
一期の瞳が雅を映し、雅の瞳は一期を映す。
「意地悪は…なし、だよ…」
二人の息が甘くなり、抱き合う姿がゆっくり横になって、そして、愛が始まる。