第8章 交差しない、けれど愛する 〔一期一振/R18〕
「いち…ご…」
「出陣のごほうびをいただきます」
顔を赤くし潤んだ瞳で名を呼ぶ雅に、一期も熱を含んだ表情で言うとキスする。
互いの舌を絡め、どちらのものかわからないものが口の端から流れるが、二人はキスを止めずにいる。
唇を離すと銀糸がひき、一期は自分のこぶしで口元をぐいと拭き、もう一度軽く雅にキスした。
「一期…あのね…」
一期が雅の服の裾から手を入れたところで、雅が話し掛けた。
「刀剣としての持ち主がどんなに良い人でも、怪我はするかもしれないでしょう?だから今回も怪我なく戻ってきて良かったよ」
この場面でそんな事を言われるとは思わなかった一期は目を丸くし、中に差し込んだ手を引き抜いた。
「一期…?」
抜いた手を不思議に思った雅が問うが、一期は馬乗りになっていた姿勢から雅のすぐ横に座ってくすくす笑い出した。
「参りましたね。こんな時にそういう事を言われるとは思わなかったです」
「え…?え…?」
からだを起こして座り直した雅は首を傾げて、一期の腕に触れる。
「私、変な事言ったの?」
「変な事と言うか…その気が無くなるような事を言われてしまってはねぇ…」