第39章 出会いは不思議を運ぶ 〔乱藤四郎〕
連隊戦の出陣で海辺にしばらく滞在するぼくたちは、ある日お休みとして海で遊ぶ事を許可された。
「刀の時は水に触れる事なんて出来なかったもんね」
そう、厚たちと話しながら水着に着替え、浮輪を持って海へ走る。
「波にもっていかれないように気を付けろよ」
長谷部から注意をされぼくたちは「はーい」と返事をし、体操をして海へ入る。
陽射しはまぶしいし日よけに着たラッシュガードはちょっと暑いけれど、刀の時は出来なかった事が出来るのは楽しい。
ぷかぷかと浮輪の真ん中で海に浮かんでいてぼーっとしていたら、気が付くととんでもなく沖に流されていた事に気付く。
まずい、波にもっていかれた。
ぼくは慌てて戻ろうとするけれど、波のちからが強くなかなか戻れない。
すると、すぐ下で何か大きいものの影に気付いた。
それもひとつではなくふたつ、みっつ。
複数の鮫かとぼくは益々焦って戻ろうともがくけれど、浮輪をしているしもともと泳ぎは得意じゃない。
助けて、と声をあげるものの届かず、ぼくは刀剣なのにおさかなのごはんになっちゃうのか、と泣きたくなった。
途端、運の悪い事に足がつって浮輪からずるりと抜けてしまい、海へごぼごぼと引きずり込まれてしまう。
ああ、主さん、いち兄、みんなぁ…さようなら…