第8章 交差しない、けれど愛する 〔一期一振/R18〕
「どんな風なの?強いから?」
雅が更に聞く。
「自分の信念を持っていて、その為なら屍を積み上げてそれを踏み昇っていく…無論その犠牲は己の信念の犠牲ですから、けしてそれらを無駄にせず世の中を治める。その世の中は世界を見ての世の中と考えていて、身分を撤廃し世界に対抗出来うるちからを作り出そうとしており、その為の天下布武を成そうとしています。世界を見てこの国を変えようとする人は、戦国の時代に他には居ませんから、彼の視野は相当な広さを持っていますね」
「ふぅん、何か意外だなぁ。織田信長って言うと、鳴かないほととぎすを殺すような、短気な人って印象しか無いんだよねぇ。やっぱり歴史って触れないとわからないものだね」
雅は一期の話しを聞きながら茶を淹れ、一期の前に出した。
「主、いただきます」
信長について話すと、一期は行儀よく茶碗を運んだ。
「あ、お菓子もあるの、粟田口の子たちも食べてるし一期の分を取ってあるんだ。待ってて」
雅は立ち上がり、部屋の戸棚へ歩くとそこから皿を取り出し、黒文字を添えて出す。
「羊羹ですね、いただきます」
「一期のだから遠慮なくどうぞ」
にこりとして雅は一期に言い、一期はやはり行儀よく羊羹を口にする。
「ほのかに梅の香りがしますね」
「あ、わかった?梅味の羊羹だよ」
雅はよく気付いたねぇと目を丸くする。
「ねぇ、そういえばもう一人、石田三成はどんな人?」