第8章 交差しない、けれど愛する 〔一期一振/R18〕
「主、戻りました」
一期が雅の部屋の前で声を掛けて、部屋の中へ足を踏み入れる。
「おつかれさまでした、一期」
にこりと出迎える雅。
「怪我はしてませんか?」
「大丈夫ですよ、刀の主はいつも私を大事に使ってくれるのです」
怪我を心配する雅に、一期は怪我はしていないと答える。
「刀の主って、えーと、豊臣秀吉だっけ?」
「ええ。朗らかで強く、町人から人気の武将ですよ」
「ふぅん、ドラマで見る秀吉っておんな好きってイメージしか無いんだけどねぇ」
イメージの違う秀吉像に首を傾げる雅に、一期は笑みを浮かべたままだった。
「主の見る秀吉像はあくまでイメージですからね、彼は政ごとに関して非常に有能ですよ」
「そうだよねぇ、そういうのが無いと国のトップなんてやってられないよねぇ」
うんうんと頷く雅に一期は話しを続ける。
「今日は織田信長殿と石田三成殿を見掛けましたね」
「へぇ、織田信長と石田三成!どんな人たちなの?やっぱりほととぎす殺すような人?」
一期の言葉に雅は興味をひかれて問う。
「ほととぎすを殺すかどうかはわかりませんけれど、織田殿はそうですね、やはり人の上にたつ器をお持ちのかただと改めて思いましたね」