第38章 愛も、戦いも、そして笑顔も。 〔同田貫正国/R18〕
祭りも終わり、大きな片付けは翌日にする、という事で皆、部屋へ引き上げていく。
俺も部屋へ戻ろうとすると、何やらぼそぼそと誰かの話し声が聞こえてきて、聞くとはなしに耳に話しを入れてしまった。
「主、そろそろ俺を受け入れてもらいたいのですが」
この声は長谷部で、相手は雅か。
「…」
なにやら小声で雅が話しているようだが、俺のところまで声は聞こえない。
しばらく彼等が話していて、そのうち長谷部の「わかりました…」との発言が聞こえてきて会話が終わったようだった。
やはり長谷部の姿が近くに現れたので、俺は目の前の木の後ろに隠れてやり過ごす。
長谷部はそのまま俺に気付かず、まっすぐ本丸へ戻って行くのを見て、俺は残っているはずの雅の姿を探す。
藍色の浴衣がちらりと見え、俺は雅の前に姿を見せた。
「…どう、た、ぬきさん…」
誰も居ないと思っていた場所から俺が現れたから、ひどく雅からは驚きが見て取れる。
「…今の、聞こえました…?」
気まずい雰囲気の中、それでも雅は俺に問うので、俺も「長谷部が何かあんたに言った事だけ聞いた。あんたの声は聞こえていない」と正直に答える。
「…そうですか…実は長谷部さんに好意を持たれていたようでして…お恥ずかしい話し、全く気付かなかったので…そういう事は難しいですってお断りしたんです」