第38章 愛も、戦いも、そして笑顔も。 〔同田貫正国/R18〕
いつもと違う夜に、浮かれる男士たち。
「次、粟田口の短刀たちによる踊りだよ」
舞台では短刀たちが歌って踊る。うまいもんだ。
俺が立ってぼんやり眺めていると、すぐ横から声を掛けられほんの少し驚いた。
「楽しんでますか?」
「…あんたか。いきなり話し掛けてくると驚くぜ」
いつものジャージ姿から藍色の浴衣を着ていて、その変身ぶりに俺は内心驚いた。
ずいぶん可愛らしく変わるもんだな。
俺がじっと見てるのに気付いたのか、照れたように「似合いませんか?」と聞いてくる。
「…悪くはない」
どう答えれば良いのかわからず、そう小さく答えるものの、加州が気付き大きく声をあげたので俺の答えはかき消された。
「あー、主、可愛い!」
加州が小走りでこちらに来て、俺の隣にいた雅の手を引くと、そちらへ連れて行ってしまい、すぐ他の男士たちに囲まれているのを、俺はその場を動かないまま見ていた。
他の男士たちが声を掛けているその様子に、何となくイラっとするものを抱えながら。
俺は舌打ちするとなるべくその姿を見ないようにするため、燭台切たちが作っている焼きそばをもらって用意している椅子に座って、それに集中する振りをして食べ始めた。
舞台では山伏、山姥切、堀川の三国広がなにやら笑いをとる芝居をしていて、見ている短刀たちからわいわいとにぎやかな声が響いているものの、俺はどうにもあの藍色の浴衣姿の雅の姿がチラついて仕方なかった。