第38章 愛も、戦いも、そして笑顔も。 〔同田貫正国/R18〕
俺はそれを受け取り中を開いてみると、確かに雅ではない別な者が書いたと思しき、達筆な文字が並んでいた。
今でこそ偉そうに近侍をしている長谷部の初出陣は、口述筆記でもしたかのように長谷部が焦っている様子が見て取れる。
他の男士もほぼ似たり寄ったりだ。
俺はざっと最後まで目を通し、ファイルを返す。
「…確かに俺と似たような感じだった…」
俺はこの感情をどこにぶつけて良いのかわからず、つい、もごもごと読んだ感想を小さく呟くように言ってしまった。
「一度出陣すれば、二度目からの同じ失敗はありません。だから長谷部さんが反対しても、私は同田貫さんが早い時点で一度出陣する必要があると思ったんです」
にこりと柔らかい笑顔を見せる雅を直視し、ふい、と俺は目を逸らす。
くっそ、こいつ、こんなに呑気な眩しい笑顔を見せやがって。
俺は自分の感情のやり場を失くし、その場で立ち上がる。
「わかった…ありがとうよ。次は失敗はしねぇ」
「ええ、わかってます。今日はおつかれさまでした」
俺を引き留める事もないので、俺は審神者部屋を出て部屋へ戻った。
内番をあれこれしながら季節が変わるのを目にする。
夏が来て、ある日、鶴丸国永が提案したという祭りの真似事を本丸でする事になった。
庭に屋台と称して台所仕事の得意な男士が料理を提供し、舞台を作りそれぞれ何やら披露したりして、夏の一晩を楽しもうという鶴丸らしい企画だった。