第38章 愛も、戦いも、そして笑顔も。 〔同田貫正国/R18〕
本丸から戻って俺は着替えると、雅の部屋へ行った。
長谷部は他の仕事をするために審神者部屋へおらず、雅が一人で紙を机に並べてなにやら作業をしていた。
「休憩するところだったので、一緒にお茶を飲んでくださいな」
俺が部屋を尋ねると、うーんと伸びをして立ち上がると雅は茶の支度をして俺にも出してくれた。
「初出陣おつかれさまでした。いかがでしたか?ヒトのからだで初めて戦ったのは?」
にこにこしながら聞いてくるその呑気な面が、屈辱にまみれた俺には憎たらしい。
「…あんた、俺の出陣を長谷部が反対したのに、俺を出陣させるとゴリ押ししたのはなんでだ?」
俺は内心イラつきながらも茶をすすり、本題に即、入る。
「そりゃ簡単です。初めての出陣と言うのは、皆さん気負いすぎるものです。きっと同田貫さんも自分は人に使われてきた刀だから、刀だった頃のように相手をばっさばっさと斬れると思われていたのではありませんか?」
「…なんで、あんたが刀剣男士の心情を勝手に理解しやがる」
俺は忌々し気に聞くと、さらりと簡潔に答えを返してきた。
「前の審神者様の報告書です」
「前の?」
「はい。審神者様が顕現なさった刀剣男士たちの初出陣の様子を、一冊にまとめていらっしゃったんです。それを全部目通しして、どのかたも初出陣は気負う、という結論を得ました」
立ち上がると紙を並べた作業机に移動し、一冊のファイルを手にして持って来ると「どうぞ」と俺に手渡してくる。