第8章 交差しない、けれど愛する 〔一期一振/R18〕
「御館様と舞に手は出させんぞ」
豊臣秀吉と石田三成が、織田信長と舞、二人の前に現れた。
「秀吉さん!?三成くん!?」
舞は驚いて声をあげる。
信長の怪我の治りが遅いことから、信長が舞と二人で湯治に出掛けた。
それは顕如をあぶり出すための罠だったのだが、案の定ひっかかった顕如の手先が襲い掛かった。
秀吉と三成が密かに隠れて、二人を襲い掛かってきたところを守りに表れる。
秀吉が一期一振を抜き、心で刀に語る。
『さぁ、御館様と舞を守るぞ。働いてくれよ』
それに呼応するように、一期一振が暗い行燈の光の中、きらりと刃先をきらめかせた。
もとより秀吉と三成は精鋭の部下を連れており、顕如の手先が敵うわけもない。
あっさり捕まり、そのうちの一人が舞に命乞いをするが、信長が自分の刀で男を殺した。
目の前の血しぶきをあげて倒れる男に、舞は信長に声を荒げる。
男は短刀を隠しており、舞を殺すつもりだったのだが、舞からはそれが見えなかったのだ。
他の男たちは縛られ、秀吉は一期一振を『ありがとな』と声を掛けて鞘に収め、鞘に収まった一期一振の心が、本丸に戻っていった。