第38章 愛も、戦いも、そして笑顔も。 〔同田貫正国/R18〕
「同田貫さん、今日はおつかれさまでした」
全て片付けて部屋へ戻る途中の廊下で、俺は雅と一緒になった。
「いや、あんたも長谷部と遠征の記録を作成したから疲れただろう?」
俺なりに気を遣って言うが、雅は小さく首を左右に振る。
「いえ、そちらは長谷部さんがほとんどやってくださったので、私が手を出す事はなかったんです」
小さく肩をすくめた後、雅は自分の唇の前に人差し指を立て少し笑った。
「内緒ですよ?本当は宴会のお料理の手伝いをしたかったんですけどね」
そのたいした事が無い仕草と表情が、何故か俺には印象に残るものとなった。
「じゃあ長谷部に明日にしてくれって言えば良かったんじゃねぇの?」
俺としては何気なく言っただけだが、雅は「あー」と少し困ったような表情を浮かべる。
「長谷部さんはこの本丸でも長いかたですし、効率良く行動も出来ますから私はあれこれ言えないんです。遠征記録も時間が経つと、忘れてしまうから早く作成してしまいたい、というのもわかりますしね…」
「この本丸で長い、と言っても、今の主はあんたなんだろう?もっとしゃっきりしたらどうだ?本丸に来たばかりならともかく、俺たち刀剣男士の言う通りにしか動けない審神者なんて他にはいねぇだろうが」
俺は面倒くさくなって、思っている事をはっきり言ってしまってから隣を横目で見る。
すると俺の言葉を口の中で反芻する雅の姿が目に入り、そしてこちらにへらりと笑顔を見せて言った。
「ありがとうございます。いつまでも男士の皆さんに頼りきりはいけませんね…」