第38章 愛も、戦いも、そして笑顔も。 〔同田貫正国/R18〕
「主、ではすぐ作業に入りましょうか」
長谷部は雅の背中に手を当て、部屋へ促す。
「あの、でも、少しやすまれたほうが…それに宴の手伝いを…」
「なに、大丈夫ですよ、さ、早く作業に入りましょう」
雅の背中を押すように、審神者部屋へ長谷部は連れて行ってしまった。
「あれさぁ、結局長谷部って主の事が好きなんだよねぇ」
近くにいた加州が隣にいる大和守安定とぼそぼそと話していた。
「やっぱりそうだよね。前の主に対する態度とは違うもんね」
大和守も加州の問い掛けに、ひそりと応じるのが耳に入ってくる。
心の臓がもやもやとするような、何だか、すげぇ面白くねぇ、と俺は思う。
しかしどういう事か説明も出来ない事を、他の男士に話せないし、自分でもやもやしているしかねぇか。
そういや、宴会の支度を手伝うと言っていたが、長谷部に遠征記録をまとめるので連れて行かれてしまって、台所を手伝う人数が足りないだろうか。
俺は気付いて燭台切に話し掛けると、一瞬俺から話し掛けた事に驚いたように目を見開いたものの、すぐ人当たりの良い満面の笑みを浮かべる。
「助かるよ。主は長谷部くんに連れて行かれてしまったし、でも、宴会はするからあれこれ支度はあるからね」
燭台切と台所へ行き、さすがに包丁を持つところまではいかないので、酒を準備したり、料理の下ごしらえの手伝いをした。
気付くと出陣していた堀川国広や歌仙兼定も台所に来ていた。