第38章 愛も、戦いも、そして笑顔も。 〔同田貫正国/R18〕
「あ、えぇと、長谷部さんが居ない間、する事もないし、あっても一人で出来る量だったから近侍は一応当番は決めていたけれど、特に頼んでいなかったんです」
「近侍を遣わず、おひとりでお仕事をなさっていたという事ですか?」
長谷部の口調が少し鋭くなる。
「ええ…駄目だったかしら…する事が無いのに審神者部屋に来ていただいても申し訳なかったですし…」
長谷部の口調に押されて弱々しく答える雅に、俺がつい声を掛けてしまった。
「主がそれで良いって言ってんだからそれで良いだろう?何か文句があんのかよ」
長谷部は首を回して俺に気付くとまゆを寄せた。
「同田貫か。おまえ、まだ、ここに来て日が浅いだろう?この本丸のしきたりをわかってないようだな」
長谷部の上からの物言いに俺はむっとする。
「しきたりだぁ?そんなの知るかよ。俺が顕現した時、そんな事は何も聞いてねぇし、あんたのそのしきたりとやらは、前の審神者のしきたりじゃねぇのかよ」
俺が言い返して長谷部が顔をしかめたところで、すぐ雅が俺と長谷部の間に割ってくる。
「あのっ…長谷部さんにはやっていただく事がたくさんあるので…お話しは後にしてもらえますかっ…」
雅の言葉に長谷部は頷く。
「そうですね、出陣していた遠征記録をまとめる作業もありますし、俺にお任せください」
そして何故か、長谷部はこちらをちらりと見たが、その表情は自分が正しいだろ、と言わんばかりの俺には不愉快極まりないものだった。