第38章 愛も、戦いも、そして笑顔も。 〔同田貫正国/R18〕
「わかったから、泣くな…俺もどうしていいかわからん」
正直に言うと俺に顔を押し当てた雅は息を呑んで、そして言った。
「…わかりました…でも…」
「でも?」
途中で区切られた言葉を繰り返すと、雅の手が俺の胸に触れた。
「…今はこのままで…少しの間…お願いします…」
しかたねぇ、と俺は片手を雅の背中へ回して抱き締める形をとった。
あくまで今だけ、だ。
しかし、安心したようにちからを抜いて俺にもたれかかる様子からみると、雅は自分が思っている以上に、前の審神者との違いにプレッシャーを感じているのかと俺は思った。
「…前の審神者と比べても仕方ないぜ」
俺がしばらくして口を開くと、雅のからだがぴくりと硬直した。
「前の審神者は前の審神者だろう?それに高齢で引退したなら、そいつだって審神者を始めた頃は、あんたみたいにどうやっていこうかって迷ったんじゃねぇか?」
無言で雅は俺の言葉を聞く。
「引き継いだ元からいる男士たちが、あんたの事を実際どう思っているかは俺にはわからん。でも今のところ誰もあんたの事を悪く言うやつはいないぜ?少なくとも俺は何も聞いてない」
自信持て、なんていい加減な事を俺は言うつもりはない。
毎日の事を積み上げて、男士たちとの信頼関係を築いてこそ、雅が自信を持てるんだろう、と何となく俺はそう思った。