第38章 愛も、戦いも、そして笑顔も。 〔同田貫正国/R18〕
俺の言葉に「そうでした…でもまだまだ前の審神者様と比べると未熟すぎて、皆様にご迷惑を掛けてばかりなんです…」
俺は「ふぅん」と鼻を鳴らし、「余程、前の審神者は優秀だったのか?」と聞いてみた。
「はい、審神者様は人格も霊力もとても高くて、この本丸の刀剣男士の皆様から尊敬されてました。引退される前に一度お目にかかりましたけれど、とても高雅なかたで雅好きの歌仙さんが慕っていらっしゃいました」
前の審神者と会った時の事を思い出した雅は、どこか遠くを見るような眼をした。
「それに比べて私は本当に未熟で、審神者の仕事ひとつ、ろくに片付けられなくて長谷部さんから注意を受けてばかりなんです」
そしてこちらに視線を向けると苦笑したので、俺は思った事をつい言っていた。
「俺は前の審神者の事は知らないが、昨日のあんたの霊力はかなりなものだと思ったがな。だから自信もって良いと思うぜ」
俺の言葉にぱちくりと目を瞬かせた雅は、その後本当に嬉しそうに微笑んだ。
「あ…ありがとうございます…そうおっしゃっていただけて、とても嬉しいです…」
そして何故か微笑みながらぼろぼろと泣き出したから、こっちは驚いた。
「おい…あんた、何で泣くんだよ…」
涙をこぼしながら雅は言う。
「すみません…嬉しくて…ようやく…認めてもらえたようで…」
あいにく手元に涙を拭くものが無い。
先程、茶がかかった時に使った布巾を使う訳にもいかず、俺は仕方なく雅の後頭部を引き寄せ自分の肩口に顔を押し当てた。