第38章 愛も、戦いも、そして笑顔も。 〔同田貫正国/R18〕
手を見てお湯のかかったところは何ともなっておらず、俺は安心させるように言った。
「大丈夫だ、ほら」
手の甲を突き出し、やけどを負ってない事を確認させると、雅はほっと安心するように小さくため息をついた。
「本当に良かったです。お茶の温度、これからは気を付けます」
頭をさげて謝ってくる姿に「たいした事ねぇよ。それに俺たちは手入れ部屋へ入れば、こんなもん治せるしな」と軽く言ってやった。
「こういうのも手入れ部屋で治るものなのですか?」
反対に驚かれ、まさかと思って問う。
「…あんた、もしかして、審神者歴短いのか?」
刀剣男士のけがは手入れ部屋で休む事で治せるのは、審神者でなくても知っている事だ。
それを知らないのは余程審神者なりたてなのか?
俺の問いに雅はこくりと頷いた。
「実はお恥ずかしながら、審神者になって半年ほどです。この本丸の前の審神者様がご高齢で引退され、私が選ばれて派遣されました。なので刀剣男士の皆様は前の審神者様から引き続いていらっしゃるかたで、私が顕現したかたは同田貫さんの他、数振りです」
成程、道理で何となく遠慮がちな訳か。
状況を把握した俺は雅を安心させるように言った。
「あんたの、その遠慮がちな態度が理解出来た。でも安心して良いと思うぜ。ここの男士たちはあんたの事をちゃんと審神者として認めているぜ。昨日の前田藤四郎や平野藤四郎も、ちゃんとあんたを主として世話をしに行っただろう?」