第38章 愛も、戦いも、そして笑顔も。 〔同田貫正国/R18〕
ハタと俺は気付く。
あまりに顔が近いという事に。
俺は自身の行動に驚きつつ「すまねぇ、なんでもない」と慌てて言って離れた。
「ええと…今日のお仕事ですが、特にしていただく事が無いので、自由にしてくださって構いません」
慌てたように雅も俺に近侍をしなくて良いと言ってきたので、だからなのか、むしろ俺は反発したくなる。
「それはなんだ?俺が近侍の仕事に向かないって言いてぇのか?」
俺の態度と言葉に驚いた表情を見せる雅は、頭を左右に振る。
「いえ、違います…!二日前に長谷部さんが、出陣前にかなり仕事を片付けてくれたんです。だから私自身もあんまりする事が無いんです…」
「…あぁ、そういう事か…」
出陣前に得意げな顔をしていた長谷部を思い出し、むしろ無性に腹立たしく思うのは何故か、きっと、やった事のない近侍の仕事を俺にさせられないとでも思われたのか。
「だが…普段どういう事をしているのか、俺も知っておきたいからな、一通り説明してもらおうか」
特にする事が無い、で終わらせられても面白くないから、俺は近侍の仕事がどういった事をしているのか、ひととおり教えるように雅に言うと、「では」と順に説明してくれた。
確かに御手杵が言っていた通り、面倒な事はないまま説明は終わる。
「いかがでしょうか」
雅が問うので「だいたいわかった」と俺が答えると、初めてかもしれない、俺の前でふわりと微笑んだ。