第38章 愛も、戦いも、そして笑顔も。 〔同田貫正国/R18〕
「…あれはあんたの霊力なのか?」
立ち上がって去ろうとしていた雅に俺は問う。
「…あれ、というのは、今の、ですか?」
目を丸くして問い直す雅に、俺は頷いた。
「それならそうです。男士の皆様が無事に戻れるように、出陣前に私のちからをお渡ししています」
ふぅ、と大きく息をついて雅は言う。
「すみません、少し疲れたので休ませてもらいます」
俺に頭を下げるとよろりとしながら自室へ戻る姿を見、そのふらふらした歩き方に黙っていられなくなった俺は「ちっ」と小さく舌打ちする。
廊下にあがり雅に近付くと、無言で肩と膝に手を伸ばしすくいあげると、軽々としたきゃしゃなからだを持ち上げた。
「…同田貫さん…」
驚いて俺の名を呼ぶ雅に俺は言った。
「あんまりあんたがふらふら歩いていて、その辺で倒れられたら困るだろう?」
俺は審神者部屋へ雅を運んでやり、障子を開いて部屋の中でおろしてやる。
「誰か呼ぶか?」
まだ良くわかっていない俺より、他の男士のほうが良いだろうと声を掛けるが、雅は首を左右に振ると一人で良いと答えた。
「ありがとうございます、少し休めば平気なので大丈夫です。このまま少し横になります」