第37章 とある本丸がとある本丸になる前に 〔堀川国広/R18〕
そう思っていたら、厨から出てきた光忠さんがお盆にコップと水差しを持っていたのに気付く。
「どうしたんですか?」
声を掛けると光忠さんは答えてくれた。
「雅ちゃんが部屋に置くお水が欲しいって言っていてね。ぼくはまだ厨を片付けてないから急いで置いてこようと思って…」
瞬間、これだ、とぼくは思い、光忠さんに言う。
「ぼくがそれを運びます」
光忠さんも手伝って欲しかったらしく、「本当?助かるよ」とぼくに言ってお盆を渡してくれた。
ぼくは雅さんが泊まる部屋へお盆を運び、まだ彼女が戻っていないのを良い事に、あの小瓶のものを水差しの中へ流し込んだ。
あのラベルから、これは俗に言う媚薬だと直感的に思ったぼくは賭けに出る。
媚薬なら雅さんは異性を欲しがるだろう。
だからぼくが夜中にこっそりこの部屋へ様子を見に来て、欲しがっていたらぼくが相手になってしまうんだ。
こんな邪な考えが思い浮かぶなんて、ぼくもどうかしている。
そう思いながら夜中になるのを待って、そっと雅さんの部屋へ赴く。
果たして水を飲んだらしい雅さんの、悶える声が漏れ聞こえてきた。
「んっ…あ…っ…」
明らかに相手を欲しがっている、ぼくは廊下から声を掛けた。