第37章 とある本丸がとある本丸になる前に 〔堀川国広/R18〕
ぼくは目をぱちくりさせる。
「主…まだヒトとしての年齢は若いけれど…病気か何か患ってるの?」
次の主が決まっているなんて、今の主に何かあるのかと思ってしまうのは当然だ。
「いやいや、違う。あの主、自分がいろいろやってきた成果を他人に任せたくないから、自分の身内に跡を継がせたいだけ。案外強欲なんだよ」
くすくす笑う男士たちの言葉が本当かどうかわからないから、ぼくはあいまいに頷いた。
「それにしても雅ちゃん、来るの久し振りだねぇ」
「清光似の美人だもんなぁ、どれだけ綺麗になっているか楽しみだ」
他の男士の言葉から、ぼくは気付く。
加州清光似の美人、といったら、ぼくが以前地下室で見た写真の子、だ。
あの子は主の妹だったのか。
通りで主と一緒に並んだ写真があるはずだ。
実際にこれからあの子に会えるのかと思ったら、ぼくは急にどきどきするのを感じた。
いったいこれはどういう事なんだろう、病気なのかな。
誰かに相談したほうがいいのかな、と思うけれど、他の男士たちはいそいそと主の妹を迎えるために掃除を始め、厨当番は菓子を作りに行ってしまった。
「ほら、堀川、手伝って。雅ちゃんに本丸が汚いって思われると困るからね」
「あ、はい」
乞われて広間や廊下などそんなに汚れてはいないけれど、もう一度手の空いている男士たちで掃除をして、主の妹を迎える支度をした。