第37章 とある本丸がとある本丸になる前に 〔堀川国広/R18〕
鍵がかかっているかも、と思ったもののそんな事はなくがちゃんと重い音をたててドアが開き、その扉の先は書庫のように本が大量に並べられていた。
部屋の電気を点け、埃っぽい空気に少しむせてしまったけれど、どうしてこんなところに書庫が、とやっぱり好奇心に負けてそこに置いてある本のタイトルを見ていこうとした。
そこへ飾ってあった写真が目に入る。
今よりずっと若い主と…もうひとり主より若いおんなのこが写っていた。
そのおんなのこはまだ幼い容姿だったけれど幸先美貌が感じられる笑顔で、更にその笑顔はなんとなくこの本丸にいる加州清光に似ているな、と思わされた。
主とこの子はどういう間柄なんだろう。
並ぶ美貌の二人に目が釘付けになり、ぼくはいつかこの部屋の事を主と話す事が出来たら、この写真のおんなのこはどういう人なのか聞こう、と何故か固く思った。
写真をいつまでも見ているわけにもいかず、並ぶ本のタイトルを見ると怪し気なものがある事に気付く。
『惑わせる香り』とは一体どういうものだろう、とぼくはその本を手にし、ぱらりとめくる。
惑わせる、つまり、媚薬をもって相手を篭絡する、その調香について記してある本だった。
本自体はかなり使いこんだ感じはするので、もしかしたら歴代の審神者がここで何に使うかはわからないけれど、媚薬の研究をしていたのかもしれない。
そう思い、それなら作られた薬がこの部屋にあるのではないか、と考えたぼくは本を仕舞うと反対側の壁に並んだ棚を覗き込んだ。
ぱっと見、並んだ瓶は何が入っているのかわからず、ひとつずつ調べるにも時間が足りなそうだったので、また同じ機会になったらここにきて調べようと、急いで元の通りに戻すと地下の部屋を出て上の部屋へ戻り何食わぬ顔で掃除をした。
それにしても、主と一緒にいたあのおんなのこ、成長したらどれだけ可愛いのだろう…