第36章 もふもふ 〔五虎退〕
ぼくは主様に失礼だと思いながらもおそるおそる審神者部屋へ近寄り、そっと耳をすませると、猫科の動物のゴロゴロとのどを鳴らす特有の音が聞こえてきた。
やっぱり虎さん、ここにいるんだ。
どうしよう、主様のお仕事の邪魔をしてしまっていいのかな…ぼくがおろおろしていると主様がぼくに気付いたようで中から声を掛けられた。
「廊下にいるの、誰?入っていらっしゃい」
ビクリとしつつ怒られると思いながらも、ぼくは障子に手を掛け「失礼します…」とゆっくりと開けた。
障子を開けたら、虎さんを抱っこしている主様がいて虎さんに話し掛ける。
「あらあら、虎さんのご主人様が迎えにきたわね」
そして今度はぼくを見て言う。
「五虎ちゃん、おはいりなさい。ちょうどいいわ、休憩するから付き合って?」
「し…失礼します…」
主様にお声掛けされて、お部屋に入らせてもらうと、主様は虎さんを下して茶器をふたつ用意するとお茶を淹れてくれた。
「はい、どうぞ。熱いから気を付けてね」
「ありがとうございます…」
「あ、そうだ、日本茶に合わないけれど、マカロンあるの。食べていきなさい。あと、虎さんたちには牛乳あげましょう」
主様は審神者部屋にある小さい冷蔵庫を開けて、小さいお菓子を取り出してぼくの前に出し、虎さんたちに器を五枚出すと牛乳を注いでくれ、虎さんたちは嬉しそうにぴちゃぴちゃと飲み始めた。