第36章 もふもふ 〔五虎退〕
次郎太刀さんの親切にお礼を言って、広間から出て厨へ今度は行ってみる。
既に燭台切さんと歌仙さんが夕飯の準備をしていたので、そっと覗いてみるけれど、すぐ歌仙さんに気付かれて声を掛けられた。
「どうしたんだい?おやつかい?」
「あ…いえ…えっと…虎さん…」
おやつが欲しくてきたのかと思われてしまったみたい。
「虎?五虎くんの虎かい?探してるの?あぁ、一匹居ないね。うん、ここには来てないよ」
歌仙さんがボウルの中の物を混ぜながら、厨をぐるりと見回してくれる。
ここにもいないのはわかったので、お礼を言って別なところに探しにいこうとすると、燭台切さんに呼び止められクッキーの入った小さい袋をくれた。
「みんなには秘密だよ?虎くんを探しながら食べると良い」
「ありがとうございます…」
小さな一口サイズのクッキーが入った袋を片手に、ぼくはまた虎さんを探して本丸を歩き回る。
時々休憩して虎さんともらったクッキーを口にしながら探すものの、やっぱり見付からない。
どうしよう…そう思った時、「ふふふ」とすぐ近くからくすぐったがる声がした。
この声は主様の声だ、と周囲を見ると審神者部屋がすぐ近くにある。
いけない、さすがに主様に失礼だ、と急いでここを離れようとした時、また主様の声がした。
「もう…虎さん、かぁわいいなぁ」
え…虎さん?今、主様、虎さんって言った?