第36章 もふもふ 〔五虎退〕
「…虎さん…」
ぼくの周りにいる虎さんは五匹のはず…だけど、今、近くには四匹しかいない。
どうしよう、どこに行っちゃったのかな…
探してこなくちゃ、と四匹を連れて部屋を出て、虎さんの行きそうなところへ行ってみる。
広間をそっと覗くと、昼から宴会をしている次郎太刀さんと日本号さんがいた。
「おっ、どうした?一緒に呑むか?」
日本号さんが少し酔ったような表情でこちらに話し掛けてきて、ぼくはびくりと硬直してしまう。
「あ…あのぅ…」
強張ったからだは言う事を聞かなくて、すると次郎太刀さんが気付いてくれる。
「なぁに言ってるのよ、短刀ちゃんに呑ませんじゃないわよ。どうしたの五虎ちゃん?」
日本号さんの額にデコピンを喰らわせた次郎太刀さんが優しく聞いてくれて、ぼくはこわごわと聞いた。
「あのぅ…虎さん…来てません、か…?」
「虎?五虎ちゃんの?いいえ、ここには来ていないわよ?あら、そういえば一匹いないわねぇ、探してるの?」
広間をぐるりと見回した次郎太刀さんは、虎さんは来ていないと教えてくれる。
「見付けたら粟田口の部屋へ連れていってあげるわぁ」
「お願いします…」