第35章 のんびり屋の恋 〔鬚切/R18〕
「主さんが幸せになるなら良いじゃないですか」
堀川は言う。
「ここだけじゃないですけれど、本丸は主さんという審神者の霊力を必要としているんです。ということはここの主さんが幸せならこの本丸の霊力は更に高まって、ぼくたちは強くなれるんじゃないですか?」
「ほう…なかなか良い事を言うな」
三日月が感心したように言い、堀川は照れたように顔を少し赤らめる。
「まぁのんびり屋が恋をして、それが実ったって事で一杯やろうか」
次郎太刀が宴会を提案するので、堀川はまたも止める。
「宴会は夜にしましょう。今は朝になったばかりですよ」
「まあったく冗談の通じない子ね」
次郎は肩をすくめつつ笑って「じゃ、夜にしましょ」と納得する。
「今宵は俺も参加するかな」
三日月が次郎に声を掛けると次郎が目をぱちくりさせる。
「あら、珍しい。主に失恋でもした?」
「そうではないが、俺ものんびり屋の源氏を祝ってやろうと思ってな」
「それなら俺も参加する。祝うんじゃなくて呪うけど」
加州がむくれたまま言うと、次郎や三日月が笑う。
「落ち着きなさいな、清光。あたしたちは人間より長く長く生きる刀剣男士。今の主と駄目でも次の主と縁が出来るかもしれないでしょ。だから今だけを見ないことよ」