第35章 のんびり屋の恋 〔鬚切/R18〕
「え?主が鬚切と?」
目を吊り上げるのは加州。
さんざん雅に「初めては自分にちょうだい」とねだってきたのに、あっさり鬚切に奪われてしまい、自身の立場が無いと少しむくれている。
「膝丸は知っていたの?鬚切が主の事を好いていたってことを?」
いない本人の代わりに集中攻撃を受けるのは膝丸。
膝丸は肩でひといきつくと口を開く。
「俺もいつからか、というのはわからないが…気付いたら何となく兄者が主の事をやたら口にするようになっていたからなぁ…」
「鬚切はわかりにくいほわほわ系だからなぁ」
はっはっはっ、と笑うのは三日月宗近で、ひとごとのように「源氏にしてやられたなぁ」と言っている。
「てっきり相手は加州だと思っていたのだがなぁ」
まるで賭け事のように三日月に呑気に言われ、加州は益々むくれる。
「俺も、俺が主の相手のつもりだったんだけど」
まぁまぁと大和守がなだめる。
「ひとの心はうつろいやすいからさ、もしかしたら清光にもチャンスがあるかもしれないよ」
「なにそれ。安定に言われたくないよ」
唇を尖らせる加州に、大和守は「それ、どういうこと」と言い返し喧嘩になりそうになるのを、「はいはい、それまで」と堀川が間に入って止めた。