第35章 のんびり屋の恋 〔鬚切/R18〕
「ぼくといったいどんな男士だと思っているの…?」
呆れたような鬚切の問いに、雅は我慢出来ずにくすくす笑い出す。
「ぷっ…ごめんなさい…でも私だってどうしようって思っているのに…」
「まぁったく…きみは…」
鬚切がやれやれ、と言わんばかりの調子で大きく息を吐いたと思うと、瞬時にからだが動き、雅が瞬きするかしないかで見ていた景色ががらりと変わった。
「…へっ…あ…れ…」
体勢が変わって目に入るのは、頬の横に薄黄色の髪の毛を垂らした鬚切と、いつも寝る時に見ている天井の格子。
「髭…き、り…さん…?」
いきなり変わった目の前の状況についていけず、雅は鬚切の名前を呼ぶ。
主を見おろす鬚切は目を細めて顔を近付けると、雅の片耳に唇を近付けていつもの柔らかい口調で言った。
「雅、いただきます」
「…えっ…なにを…」
突然挨拶をされ戸惑う雅に、鬚切は雅の耳朶を軽く食む。
「ひゃっ」
いきなり耳に与えられた感覚に驚いてからだを強張らせる雅に、鬚切は逃さないと言わんばかりにがっしり雅の両手を雅の頭の横へ置き、押さえこんで逃がさないようにする。
鬚切の唇は耳から首筋へと這い、徐々に雅を甘い感覚へ落としこんでいくのだった。