第35章 のんびり屋の恋 〔鬚切/R18〕
鬚切がきちんと審神者の前に座り、切れ長の瞳をぴたりと審神者に向ける。
「あの…ぉ…」
審神者のほうが居心地の悪さを感じ、鬚切に用件を聞こうとした時、鬚切はようやく口を開いた。
「雅…ぼくは雅、きみが好きなようだ」
唐突に呼ばれた名前にどきりとする審神者こと雅。
「わっ…私を、好き…っ…」
重ねて聞き返す雅に、鬚切は両手で彼女の手を包むように握る。
「きみはやはり初期刀の加州清光が好きなのかい?」
問われて動揺する雅の表情を捕らえて鬚切は問う。
「そんなに動揺するなんて、やっぱりそうなのかい?」
「…いや…そう、じゃ、ない…」
しどろもどろに答える雅に鬚切は小首を傾げ、さらりと薄黄色の髪の毛が頬に掛かる。
「初期刀の加州と同衾したいのではないの?」
「…どっ…ど、きん…」
直接的な言葉に雅は目を白黒させるが、鬚切の追及は止まない。
「どうなの?ずいぶんと彼に言い寄られているみたいだけど?」
「…いや、それは…その…清光さんは…愛されたい、という思いが…強いから…」
その答えに鬚切は形の良いまゆを少しひそめ、いぶかしむように尋ねる。