第35章 のんびり屋の恋 〔鬚切/R18〕
自室に戻った鬚切は何やら考え込んでいる様子で、先に戻っていた膝丸は何度かためらった後、声を掛けた。
「兄者、どうした?何か気掛かりな事でもあるのか?」
「…あぁ…ようやく気付いたんだ」
鬚切は真面目な顔をしたまま膝丸を見る。
「ぼくはどうも、主が好きらしい」
「…は…?」
膝丸は唐突な兄の告白に声が出ない。
「自覚は全く無かったんだが、さっき顔を見ていたら主を困らせてしまった」
「な…主の何を困らせたんだい?」
意味不明な鬚切の言葉に、膝丸は問う。
「主の笑顔が可愛くて、他の男士に見せて欲しくないと言ったんだ」
ぽつりとつぶやく鬚切の言葉に、そりゃ無理だろう、と膝丸は内心突っ込む。
「勝手にからだが動いて、主にキスしてしまった」
「ふぅー…ん…え…?」
いきなりな告白に膝丸は驚いてあいづちを途中で止める。
「自分でも何故かわからなかったが、どうも主に他の男士と話して欲しくないし、笑顔も見せて欲しくない…考えてこれは嫉妬というものかと気付いたんだ」
そのままひとりごちるように話す鬚切は、自分の感情がどういうものかようやく気が付いた、と話す。