第35章 のんびり屋の恋 〔鬚切/R18〕
そして膝丸は続ける。
「そうだな…もしかしたら長谷部や加州あたりなら、何か買っているかもしれないか」
「長谷部と加州…主に割とべったりな二振りだね」
「まぁ加州は初期刀だし、長谷部はあの通り主の世話係を自認しているからねぇ」
話しをしていると万屋に到着し、膝丸によって必要なものを手早く購入する。
その間、のんびりと店内の商品を鬚切は覗いており、そしてあるものを手にする。
「どうした、兄者?」
膝丸が聞くと、鬚切は繊細な作りの切子細工の小さなグラスを見ていた。
「…ねぇ、膝切」
「…何だい、兄者」
もう訂正する気を失くした膝丸は、そのまま言われた名前を受け入れる。
「これ、主が使ったら可愛いだろうねぇ」
「え?主?」
唐突に主が出てきて驚く膝丸に、鬚切はそれを手にしたまま、それだけの会計を済ませてしまった。
「兄者、待ってくれ」
万屋の外へ出ようとする鬚切に声を掛け、慌てて膝丸は頼まれたものの会計を済ませる。
鬚切は満足そうな表情で膝丸を万屋の外で迎え、今度は本丸へ戻る道を歩くのだが、膝丸はいきなり主へ土産を買った鬚切の真意が気になってしかたなかった。