第35章 のんびり屋の恋 〔鬚切/R18〕
鬚切はその様子を見てくすくす笑うと、審神者から離れる。
離れた鬚切を見て、何が起きたか理解が出来ていない審神者も起き上がる。
「遊びはここまで。お茶、ごちそうさま」
ささっと盆を片付けて鬚切は立ち上がると、呆然としたままの審神者を残してさっさと部屋を出て行った。
ぽかんと残された審神者は、しばらくしてようやく状況を理解する。
「ええ…一体、鬚切さんは何故…?」
鬚切が盆を台所へ戻しに行くと、山姥切がそれを探していたらしく「あ」と声を掛ける。
「それ、探していたんだが」
「主にはもう持って行って休んでもらったよ」
鬚切は笑みを浮かべたまま山姥切に言い、山姥切は「どうして近侍でもないのに…」と鬚切に言うが、鬚切は表情を変えずにさらりと答える。
「なぁに、きみが忙しそうだったから代わりに置いてきただけだよ」
それじゃ、と片手をひらひらさせて台所を去る鬚切を、山姥切は一体何の目的があるのだろう、と疑いの眼差しで見送った。
「…何を考えてるかわからない男士だな…」
ぼそりと山姥切がつぶやくのを、側にいた歌仙兼定がなだめるように言う。
「まぁまぁ落ち着いて。ただきみが忙しそうだから手伝ってくれただけだろう?」
その問いに大きくため息をついて山姥切は答えた。
「そうだが…何を考えているのかわからないから、どう接して良いかわからないな…」