第35章 のんびり屋の恋 〔鬚切/R18〕
「ぼくの食べ方が綺麗だと、主が顔を赤くするのかい?」
きょとんとして鬚切は尋ね、審神者はその問いに「えっ、えっ…」とうろたえてしまう。
その様子に鬚切はくすりと笑って菓子の皿を茶卓に置くと、手を伸ばし審神者の口元を自分の人差し指でなぞった。
何が起きたかわからずそのまま審神者は固まり、鬚切は指を自分の顔の近くへ戻すと、ぺろりと人差し指を舐めた。
鬚切が何をしたのか頭がついていかず、審神者は益々固まったままとなり、当事者の鬚切は審神者を見てにこにこする。
「主は意外とおっちょこちょいだなぁ。口元に最中がくっついていたぞ」
「…はっ…えっ…も…なか…?」
鬚切に言われ何が起きたかようやく頭の中を回す審神者は、やっと答える。
「そう、最中。それとも…」
そう言って、ずい、と鬚切の顔が間近に近寄り、美しい顔が目の前で妖艶な微笑みを浮かべた。
「何か勘違い、した?勘違いなら…そのままそうしようか?」
鬚切の左手が審神者の右手にあった黒文字を取り上げ、茶卓に放り投げると同時に鬚切がまた左手で審神者の右手首を掴み、そのまま体重をかけ後ろへ押し倒す。
鬚切の右手は審神者の後頭部へ回り、畳に頭をぶつけないようにしてぽんと倒され、気付いたら審神者に視線は天井を見ていた。
「…は…え…っ…?」
審神者は驚いて目をぱちくりさせ、それからようやく何が起きたか理解し、「えっ…えっ…」と焦ったように驚きの声をあげる。