第35章 のんびり屋の恋 〔鬚切/R18〕
突然詰め寄られ審神者は驚きながら答える。
「まぁまぁ、落ち着いて…鬚切さんは後から顕現されたから、錬度が膝丸さんよりまだまだ劣るんです。膝丸さんは錬度をあげているところなので、同じくらいの男士のかたがたと一緒に出陣していただけますけれど、鬚切さんはそうはいかないので、既にほぼ完成されている三条のかたがたと出陣して、いわば守ってもらいながら自身の錬度をあげる、という状態になっているのですよ」
審神者として、どうして兄弟刀なのに一緒に出陣させないのか理由を述べると、膝丸も思い当たるのか、「そうか…兄者の錬度か…」と少し落胆するので、審神者はにこりとして言った。
「鬚切さんの錬度があがれば、兄弟で出陣していただく事も出て来ると思いますから、もう少しの間、見守ってあげてくださいな」
「…わかった。兄者の錬度があがったら、絶対一緒に出陣させてくれ」
膝丸の真剣な眼差しに審神者は「勿論」と快く答えた。
「では、私は審神者部屋にて今日の業務に入ります」
その場にいる男士たちに頭を下げると、審神者は自分の仕事をしに審神者部屋へ移動する。
「主、時間になったら茶菓子を持って行くぞ」
「はい、お願いします」
今日の近侍の山姥切国広に声を掛けられ、返事をし、部屋を出て行った。
「今日の近侍は山姥切かい?」
鬚切はにこにこしながら聞き、横にいた膝丸は「兄者…他の男士の名前はちゃんと覚えられるのだから、弟の名前も覚えてくれ…」とつぶやいたのは、その場に居た男士全員が耳にしたものの、鬚切はやはり相変わらず弟の名前を間違えて、膝丸ががっくりするのだった。