第35章 のんびり屋の恋 〔鬚切/R18〕
「…っ、わぁ、鬚切さん、ありがとうございます」
慌てて鬚切から離れて礼を言う審神者に、鬚切はあくまでのんびりと微笑んだ。
「いやぁ、良かったねぇ、ここに倒れていたら、朝餉が台無しだったからね」
確かに倒れていたら、見事に座卓に置いてある茶碗や皿の中をこぼしまくっていただろう。
「あぁ、悪かった、主。そんなに慌てるとは思わなかったよ」
加州も謝るので審神者としては「気を付けてね…」としか言えず、座って朝餉を摂りだした。
朝餉を食べ終え、内番の男士はそれぞれの仕事へ向かい、残った男士と審神者は朝餉の片付けを手伝い、それが終わった審神者は「さて、私も審神者業をするか」と軽く伸びをする。
加州が近くに寄ってきてひそ、と小声で話す。
「主、さっきの話しだけど、本当に初めての相手は俺にしてね」
「…っ…きよ、みつ…」
途端に顔を赤くする審神者に、加州はふふ、と笑みを浮かべる。
「赤くなって可愛いな、主は。俺、主を満足させてあげられるよ?」
あまりに大胆な告白に息を呑む審神者は、瞬時に色気を含んだ口調の加州に動きを止められ対応に戸惑う。
加州は人差し指を前に出してくるとちょんと審神者の唇に触れ、その指をそのまま自分の唇に触れさせた。
「主と間接キスしちゃった」
いたずらしたこどものような無邪気な笑みを加州は浮かべ、その様子に審神者は更に顔を赤くして「冗談はやめて?」と言うのが精一杯だった。