第34章 誰も知らぬ過去 〔不知火空抄〕
「あの時は炎柱に会う事はなかったけれど、会っていたら刀だったきみにも会っていたかもね」
堀川国広が穏やかに言ってくれて、そして、ぼくは思うところを述べる。
「知らないところで知られていない歴史を変える動きがあったんですね。ぼく、本当はあのヒトが生きていられるなら、歴史が変わっても良いと思ったんです。あのヒトがヒトの寿命まで生きていたら、どれだけ活躍していたのだろう、ぼくをどれだけ使ってくれたのだろうって思います。でも…」
「でも?」
大和守安定がぼくが切った言葉を続ける。
「歴史を変えたらいけないのはわかりましたけれど、何故なのかは今はまだ理解出来ません。でも、ここに来たからには歴史を変える相手と戦わなければならないのであれば、ぼくは刀の本分として闘いながら、その理由を考えていこうと思います」
ぼくの言い分を聞いて、長曽祢虎徹はまたがしがしとぼくの頭を撫でた。
「闘いながら、戦う理由を探すのは悪い事じゃあ、無い」
「はい…あと…もうひとつ教えて欲しい事が」
ぼくの疑問にまた全員がぼくを見る。
「先程、ぼく、水が目から出てきたのですけれど、あれ、一体何なのですか?」
ぽかんと全員がし、そして加州清光が涙、というものだと教えてくれた。
ぼくを相棒と呼んでくれた炎柱のヒトに、いつか、大正時代に出陣して、ぼくを振るうあの姿を見られたら、ぼくはまた泣いてしまうかもしれない。