第34章 誰も知らぬ過去 〔不知火空抄〕
「柱って事は隊の中でも突出した実力の持ち主だろう?すごいな、おまえ、そんなすごい人の刀だったのか」
部屋の中から顔を出している男士がぼくに言う。
「あの…鬼殺隊や日輪刀の事を…知っているのですか?」
ぼくは隠れた歴史となっているはずの鬼退治を、何故知っているのだろうと問う。
長曽祢虎徹が口を開く。
「長くなりそうだから、ほら、部屋に入れ。まずここのやつらの紹介もしないとな」
それもそうだ、と促され、ぼくは案内された部屋に入り、ちょうどそこに集まっていた男士の紹介を受けた。
新選組の近藤勇の刀だった長曽祢虎徹、土方歳三の刀だった和泉守兼定と堀川国広、沖田総司の刀だった加州清光と大和守安定。
「時間遡行軍の事は聞いただろう?あれが以前大正時代に出た事があって、ちょうど俺たちが出陣したんだ」
長曽祢虎徹が話し出した。
「奴らの目的は鬼殺隊を表に出して、鬼はすぐ身近にいるもの、と当時の人々に知らしめようとしていた。鬼や鬼殺隊の存在は、人々に知られてはならないから、俺たちは奴らと闘い、奴らの目的を封じた。この時に鬼殺隊の事は知ったんだ」
「そう言えばその時に見掛けた柱は…確か音柱だったな。派手な事が好きそうで、俺はああいうやつは好きだぜ」
和泉守兼定が言葉を引き継ぐ。
あの音柱に会ったのか…このヒトはもともと忍びで厳しい教えを受けたせいか、その反動で派手な事が好きなのだけど、この和泉守兼定という刀も派手な事が好きなのかな、とぼんやり、ぼくは当時の音柱の、派手な模様を顔に描いた姿を思い出していた。