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刀剣純情伝 《刀剣乱舞/短編集/R18》

第34章 誰も知らぬ過去 〔不知火空抄〕


ぼくの頼みに長曽祢虎徹はぽかんとした表情を見せ、そしてそのまま自分の手のひらを見る。

それから大きくにっとぼくに笑い掛けたと思うと、その見ていた手のひらをぼくの頭に乗せてがしがしと撫でてきた。

この感じ、やっぱりあの相棒と呼んでくれたあのヒトに似ている。

そう思った途端、ぼくは撫でてくれる懐かしいあのヒトを思い出し、突然何とも言えない思いがこみあげて、ぼくは目から水をぼたぼたと落としていた。

「あ、おい、どうした?」

ぼくの様子に慌てた長曽祢虎徹の声に、近くの部屋の障子が開き、刀剣男士が顔を出して叫んだ。

「あー、長曽祢さん、泣かせてるー」

「えー、なんだって、どうした?」

すると同じ部屋から他の男士がわらわらと顔を出してきて、長曽祢虎徹は慌てて言う。

「違う、俺は何もしてない。ただ撫でてくれと言われて撫でただけだ」

「もしかしたら撫でかたが痛かったんじゃねぇの?」

部屋の中から茶化すような声がし、はっと気付いたような長曽祢虎徹がぼくに問う。

「もしかしたら強かったか?痛かったか?」

ぼくはぼたぼたと水を落としながら、首をぶんぶんと左右に振る。

「違う…違うん、です…ぼく、なつ、かしく、て…」

「懐かしい?」とぼくの言葉に長曽祢虎徹が被せるようにまた問うてきた。
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