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刀剣純情伝 《刀剣乱舞/短編集/R18》

第34章 誰も知らぬ過去 〔不知火空抄〕


布をかぶった山姥切国広が、こちらをじっと見ながら言うものの、途中で長曽祢虎徹が遮る。

「刀派は特に無いようだが、最初に出来たのが新々刀に近い時代ならば…」

「ああ、もし良ければ俺が預かろう」

「長曽祢様、よろしいのですか?」と雅が問う。

「構わんよ、俺たちは前の主が幕末だから、大正とは時代が近いしな」

別に他意はなさそうだし、雅が「そうおっしゃるならお願いします」と頭を下げたので、ぼくも同じように頭を下げた。

「…お願いします」

すると下げた頭を長曽祢虎徹にがしがしと撫でられた。

「よしよし、楽しくやろうな」

「足りないものは山姥切様に言ってくださいな。すぐ用意します」

「あぁわかった。よし、不知火、行くぞ。部屋へ案内しよう」

長曽祢虎徹は鷹揚に言って立ち上がったので、ぼくも立って一緒に部屋を出た。

さっきの頭を撫でた時の手が、すぐ目の前に見える。

ぼくを…刀の鞘を必ず撫でてくれたあのヒトを思い出すような、暖かい大きな手。

「あの…」

ぼくが話し掛けると、長曽祢虎徹はぼくの顔を見るので思い切って言ってみた。

「お願いがあるのですが…もう一度さっきみたいに、頭を撫でてくれませんか?」
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