第34章 誰も知らぬ過去 〔不知火空抄〕
「ちょっと待て、今、調べる…ん…これ、幻の刀じゃないか!」
何やら板みたいなものを取り出し、それを見ながらぼくを調べていたヒトが声を荒げた。
「幻?」
「あぁ。この錆びているとはいえ黒い刃。たった一振りだけ作った不知火の刀だよ」
「聞いた事あるぞ。その一振りが真っ黒な刃で作るのを辞めてしまい、本人はその後病気で死んでしまったってあの刀か」
ぼくを鞘から抜いたヒトは、ぼくを見ながら、やはり驚いた表情でぼくを見て更に言う。
「それに、これはあの日輪刀として使われていた刀だろう?今では日輪刀は残っていないから、ものすごい貴重なものじゃないか」
「ああ、そうだ。まさか日輪刀が残っているとは思わなかった。すぐ戻ろう」
そしてぼくを鞘へ戻すと、二人はぼくを自分たちの時の政府へ連れて行った。
そしてぼくはお面の刀工とは違うヒトに、磨かれることとなった。
あの時とは違ってやたら冷たい感じのする場所で磨かれ、刃が相当悪くなっていたぼくは磨り上げられ、それまで打刀だったのが脇差として生まれ変わった。
「さて、これを顕現させられるのは…あの本丸の審神者か?」
ホンマルとはなんだろう?そしてサニワとは誰だろう?
ぼくはそして時の政府から持ち出され、また違うところへ連れて行かれる。
どうもホンマルというところへ連れて来られ、目の前に座るヒトのものになるらしい。
こんな細いおんなのヒトが、ぼくを扱えるのだろうか。
どう見ても鬼を退治してきた彼と同じようには思えないけれど、そのヒトは言った。