第33章 すいーつ王子の甘い指導 〔小豆長光/R18〕
「私はそのようなものではなく、ただ、甘いものをつくるのが好きなのだ」
大きな体躯の男性の姿をした男士が、スイーツ作りが趣味なんて、と主は目を丸くし、そして小豆の台所に立つ姿まで想像してぶっと吹いてしまった。
「…すみません…でも…小豆さんがエプロンして台所に立っている姿を想像して…あんまり似合わなく、あ、いえ、想像しにくくて…」
慌てて謝る主に小豆は目を細める。
「では、私の作ったスイーツを食べてもらおうか」
そういって小豆は立ち上がり、今から作る、と支度をしに部屋へ戻ってしまう。
近侍の仕事をする時は内番と同様と考え、男士たちには内番姿で近侍の仕事に入って良い事をこの本丸は決めている。
長谷部には近侍であるなら自分たちは正装で、と話しがあったが、審神者自身がジャージ姿でいるのに男士に戦闘に行くような正装をされていてはちぐはぐだから、と内番姿を認めているのだ。
そのジャージ姿の小豆が支度をする、と言って出て行き、支度とはなんぞやと思う主は、立ち上がり小豆を追い掛け、彼が使っている部屋の前に立った。
同時にすらりと障子が開き、目の前にジャージにピンク色のエプロンを身に着けた小豆が立っていた。
ピンク色のエプロンには「AZUKI」と書かれた文字と絵が胸元に入っていて、あまりのギャップに大笑いしそうになるのを我慢する。
「その…エプロ…」
主が笑いをこらえつつ聞くと、小豆は真剣に答える。
「これは前の審神者の時から着ている。前の審神者が嫁に行く前に作ってくれたのだ」