第6章 愛は咲く 〔一期一振/R18〕
私はその表情と張りつめた空気に、彼女の言葉が嘘でない事に気付き、後ろへずるずるとさがるしか出来なかった。
恐怖にかられると、人は、思った以上にからだが動かない。
それをたった今、身を持って知る。
「ふふ…怖くて動けないって顔ね。その可愛らしい顔にどう傷を作ってやろうかしら。どの刀剣たちが逃げ出すくらいに傷を負わせてやるわ。この私に盾突いた罰よ」
にやりと片頬をあげてほくそ笑む姿に、指一本動かせない自分がもどかしい。
でも怖くて動けないのが本当だ。
助けて、助けて!!
心の中でこんのすけが悪事を探して戻ってきてくれるのを、今かと待ちわびる。
短刀をふりかざされたその時。
大きく音をたてて襖が開いた。
「審神者殿、そこまでです」
こんのすけが小さなからだいっぱいに声を出す。
「うるさいわね、狐。死にたくなかったらここから早く出てお行き!」
彼女はなおかつ、私に短刀を持って迫る。
が、こんのすけの後ろから部屋に入ってきた、この時代の刀剣たちが無言で彼女を押さえた。
「ちょっと…何…?あんたたち、離しなさいよ!」