第32章 夜を独り占め 〔膝丸/R18〕
「わからないって何がわからない?黙って俺のする事を受け入れてくれれば良いのだが?」
「…」
主は下を向いて返事をしない。
俺は返事をしない事を都合の良いように解釈し、抱き締めたままの主の首筋にそっと唇を押しつける。
途端、主のからだがびくりと硬直し、こういう事に不慣れな様子を露わにする。
「主…雅…落ち着いて。俺に任せてちからを抜きなよ」
俺は主の名前を呼んで背中をさすり、落ち着かせるように言うと、「でも…でも…」と戸惑う主が口にする。
「でも、は無し。だから、俺に任せて?悪いようにはしないから」
俺は背中をさすっていた手を主の顎に移動させ、主の顔をあげさせる。
真っ赤に色付いた主の頬に俺の手を滑らせ、俺は覗き込むように顔を近付ける。
「か、お…ちか、いっ…」
主が視線を彷徨わせながら顔を横へ向けようとするものの、俺に顎を抑えられ動かせずにいるのも初心だからこそ。
俺は何もかも初めてのおんなを相手にするのか、と自分の色に染められる事に内心興奮を止められず、主の額、頬、鼻の頭、と軽くキスを落としていく。
「…雅…そんなに固く目をつぶらないでくれるかい?」
ぎゅうと目をつぶる主の目元にもキスすると、少しちからを抜いてくれるのも愛らしい。
そして俺は主の唇へちゅ、と軽く唇を押しつけた。