第32章 夜を独り占め 〔膝丸/R18〕
成程、ここの主は真面目な性質らしい。
俺が今迄顕現した本丸の主にはかなり奔放なのもいて、異性だけでなく同性も好む者もいたが、たいていの女審神者は年頃になるとお気に入りの男士を近侍として、昼夜側に置いておくようになったものだ。
そしてそのうちその一人と一振りの間に違う感情が沸いて、ある日からしかるべき行為が始まっている、そんなのが当然だったから、俺たち男士は神だからそんな事を考えるだけで不埒で出来ないと叫ぶ主は、相当な箱入り娘なのかと俺は勘ぐってしまった。
「主は箱入り娘、とやらなのかい?」
俺が問うと主は目をぱちくりさせ、すぐにぶんぶんと頭を左右に振る。
「ううん、そんなんじゃないよ。男の人と接する事は少ない環境ではあったけれど」
成程、俺たちのように同性ばかりの集まる環境で育ったという事か。
しかしそれでも相応の年齢になれば、異性とどうこうなりたいと思わないものだろうか。
「あ、あの…本当に私は変わっていて…男性が苦手だったから…」
「苦手でよく審神者を引き受けたな」
俺は気になった事をはっきり言うと、苦笑しながら主は言った。
「神様って聞いたからその…もっとおじいさんたちなのかと思っていたから…まさかその…若い男性たちの姿で顕現されてくるとは思ってなかったんだよね…」
神様だからじいさんが男士か…よぼよぼのじいさんたちがどうやって闘うんだ?
俺が呆れたように小さくため息をついてからそれを指摘すると、主はそれについても思っていた事を伝えてきた。
「いや、そこは法力とかで時間遡行軍をやっつけるのかと思っていたんだよね…」