第30章 He is a NOT boy. 〔大和守安定/R18〕
加州が、主の事をかなり正確に美人の部類に入る事を把握しているのと、その外見もっさり主が大和守をどうも気に入っている、という事まで気付いている繊細さに、大和守は内心舌を巻いた。
「清光はよく主を見ているね」
もしかしたら加州は主の事が、と内心大和守は思う。
けれど加州はけらけらと笑いながら否定する。
「あ、もしかして俺が主の事を好きとか思ってない?違うからね。俺は可愛いものが好きだから、主にも可愛くしていて欲しいんだ。それだけだよ」
「…清光には敵わないなぁ」
思ったところまで読み取られ大和守は苦笑し、加州はその姿を見て言う。
「嫉妬でもなんでもなく、俺は安定と主がもっと仲良くなったら良いな、と思うよ。そうしたら主ももっと可愛くなってくれると思うしね」
「…わかった」
夜になり、月光が薄く光を投げかける中、寝姿になった大和守は静かに廊下を歩く。
ほとんどの男士が眠りにつき、大和守も加州から「俺、明日から遠征だから先に寝るね、おやすみ」と言って早々に布団にもぐり込まれてしまった。
主の部屋の前に立ち大和守は小さく声を掛ける。
「…大和守だけど…」
「…どうぞ」
一瞬ためらったような戸惑いの空気が漂ったと思うものの、主の返事が有り大和守は静かに襖を開けて中へ入ると、布団の上にきちんと正座して眼鏡も外した主が、少しうつむいて大和守を待っていた。