第30章 He is a NOT boy. 〔大和守安定/R18〕
大和守は茶を口にしながら、ちらりと雅の姿を盗み見る。
眼鏡の奥の艶めいた瞳は見えないけれど、ぽってりした唇もそれ単体で色っぽく、あの唇とキスしたらどんな感触なんだろうか、とふと、思ってしまう。
「…何?これ、欲しい?」
じっと雅を見ていた視線に気付いたのか、雅の食べ掛けの菓子が欲しいのか、と大和守は聞かれてしまう。
「え…あ…うん…」
曖昧に返事をすると、雅はにこっと微笑んで「はい」と手にした菓子をくれた。
「あ…ありがとうございます…」
慌てて礼を述べてそのままその菓子を口の中に放り込む。
「大和守はこのお菓子が好きなの?」
大和守の湯呑を取り上げる雅は、急須にお湯を注ぎお茶を足してくれた。
「お茶の淹れかたもねぇ…燭台切あたりからそんなんじゃないよって注意されるんだけどね、私はそういうの適当だから、美味しく淹れられないのは我慢してね」
燭台切に何やら注意をされているのか、それを思い出したのかくすくす一人で笑いながら大和守に話すのを見て、つい彼は口を開く。
「主って燭台切さんの事が好きなんですか?」
「…は?」
突然の質問に雅は表情を固まらせて大和守を見つめる。
「…私が燭台切の事が好き…?あのねぇ…何を言っているの?貴方がたは付喪神、神様でしょう?その神様にそんな感情を持つなんて…反対に審神者にそんな人、いるの?」