第30章 He is a NOT boy. 〔大和守安定/R18〕
「ふぅ…大和守、進み具合はどう?こっちは終わったよ」
しばらくして雅は声を大和守に掛ける。
「こっちもあと一枚入力で終わり」
そう言いながら、かたかたとキーボードを操作する大和守を見て、雅は立ち上がると部屋に置いている茶器に茶葉を用意して、二個の湯呑にお茶を淹れた。
「ごめん、先にひとやすみするから、終わったら休んで?」
こくりとこちらを見ずに頷く大和守の様子を見ながら、雅はふぅと湯呑の表面に軽く息を吹きかけた。
「あ、そうだ」
雅は湯呑を置いて立ち上がり、棚に置いている菓子も出し、座るとまた湯呑を手にし両手で包み込むように持ち、ずず…とお茶を口にした。
「主、品が無い。清光がその姿見たら、『それじゃあ駄目』ってきっと怒ると思うよ?」
音をたてて茶を飲む雅に大和守は注意をするが、見た目を気にしない主な為、飲食についても気にしなさすぎのところがあった。
「はいはい、大和守が黙ってくれていれば良いんだから、言わないでよ?」
湯呑を口元に運んだまま小さく笑う雅に、大和守は少しどきりとするものの、あとちょっとで終わるから、と急いで残りの入力を終わらせる。
「…よし、終わった…!」
肩をぐるぐる回して言う大和守に、雅はごくろうさま、と声を掛ける。
「あの量をこれだけの時間で入力するなんて、大和守はタイピングが早いのね」
少しだけ冷めたお茶に礼を言って、席を移動してきた大和守は飲んだ。